食べること

21.08.27

室長の外ごはん白書 vol. 11 無花果王国、爆誕

saorin

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山にキャンプに釣りに、アウトドアに全力を注ぐホトリ室長saorinが、愛してやまない外ごはんについて語るコラム。庭で採れる無花果を堪能する話。

saorin・室長の外ごはん白書 vol. 11 無花果王国、爆誕

今のマンションに住んで19年目になる。
vol.8のレモンの話でも書いたが、我が家の庭には常に色んな植物がしっかりと根を張り、勝手にすくすくと生きている。食いしん坊の我々はあまり花には興味はなく、植樹するのは大体食べられそうなものばかりなのだが、思い起こしてみればsaorinファームの18年には色んな歴史があった。今日の主役はあくまで無花果で、ここからしばらくはどうでもいい前振りなのだが、ここに書き記させていただきたい。

saorin・室長の外ごはん白書 vol. 11 無花果王国、爆誕
こうして改めてみると夏はジャングルのような我が家の庭

まず一番古い記憶が、フェンネル。ウイキョウとも呼ばれるハーブだ。何となく植えてみたそのフェンネルが急成長を遂げ、株の根っこが私の胴ほどに太くなってその成長ぶりに恐れをなし、伐採した。フェンネル王国、突然の終焉。

次に栄えたのはパクチー王国だった。適当に種をまいたらこれがめちゃめちゃ大きくなり、わっさわっさと葉が茂った。が、その頃まだアジア料理に目覚めておらず、たくさん採れても消費量が追いつかなかった。そのまま放置していたらいつの間にか枯れていた。パクチー王国の終焉。

ほぼ同時期に根を張り、どっしりと構えていたのはオリーブだった。実はなるのだが収穫しても自家製オリーブオイルにするのはめちゃくちゃ根気がいることがわかった。買ってくる方がはるかに早い。(身もふたもない)

そのうち、オリーブは台風でぽっきり根元から折れ、壊滅的な被害を受けた。あまりの折れっぷりに死亡したかと思われたが、実は根っこは生きていて、そのうち枝葉が復活して感動した。が、かつてのボリュームはなく、今はsaorinファームの主役を明け渡してひっそりと生きている。ちなみに以前書いたレモンも、奥の方でひっそりとしぶとく生きているタイプだ。

そしてここ10年ほど、saorinファームでずっと繁栄してきたのはキウイだった。

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右側の葉が無花果、虫に食われてる左側の丸っこい葉がキウイ

雄と雌、二本植えないと実がならないというから、そのまま苗を二本買ってきて植えた。植えて2~3年は弦がどんどん伸びて巻きついていくのでとりあえず元気に育っているようだが、実がなる気配はとんとなかった。実はならないのだが弦は伸びていく。植物が滋養を土から蓄えて実を結ぶには時間が必要だったのだなと今は思う。
そしてキウイを植えてから数年後、初めて花を確認した。白くて可憐、割と大きな花だ。見たときすごくうれしくて興奮したのを覚えている。そして、花が咲いたあとこんな風に実がなるのか・・・!とわくわくした。

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割とかわいいキウイの花
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キウイの花が咲いた後、雄株に咲く花の花粉が雌株の花に受粉して、雌株の花の付け根に実ができるらしい。そういえばキウイの花の頃、ミツバチが忙しそうにぶんぶん飛び回っている。

そしてそれから、毎年夏の終わりから冬にかけて、saorinファームはキウイが覇者となった。キウイは実がなってもそのままだと固くて食べられない。追熟が必要となる。その面倒さもあり、あとそんなにキウイを消費できる術がなくて、鳥につつかれまくっても放置していた。(あれ、無花果の話なのにキウイの話みたいになってる)

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どんどんなるキウイ。とても食べきれない。

弦タイプの植物はとにかく強いと聞いていたが、本当にそうだった。台風が来て弦が折れても、弦が伸びすぎてるので手荒に伐採しても全然平気。毎シーズン、軽く100個以上は実がなっていたと思う。そのまま、saorinファームの絶対王者、キウイ王国は安泰かと思われた。

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そこで登場してきたのが、新勢力を伸ばしてきた無花果だ。
無花果も、実がなったらおいしそう~みたいなノリで植えたと思うのだが(記憶がない)やはりキウイと一緒で最初は実がならないどころか、え、無花果の樹はどれだっけ?というくらい存在感がなかった。だが、いつの間にやら他のどの樹よりもすくすくと成長し、去年ふと見ると、ん、もしかしてあれは無花果の実ではないか?というくらい、さりげなくぽこっと数個実がなっていた。

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それがだ。今年2021年は無花果フィーバー!!!というくらい、阿保みたいに無花果がなっている。去年までの覇者だったキウイ君は、花はたくさん咲かせていたのに、どうやら実を結ぶための精力を無花果に吸い取られてしまったようで、なんと2~3個しか実がなっていない。キウイ王国はどうやら覇権を無花果に明け渡したらしい。まさに”盛者必衰の理”、である。
そして今年の無花果たちはまさに”たわわ”と言わんばかりのボリュームだ。
はあ、やっと今回の主役の無花果の話を始められた(笑)

無花果とは何ぞや、と調べてみると、何とその種類、100以上もあるらしい。うちの子はなんという名前なのかさっぱりわからない。「無花果」の字は、花を咲かせずに実をつけるように見えることに由来するらしい。(Wikipediaより)キウイは花がたくさん咲いたのでこのあと実がなるのだね、わくわく!という感じだったが、無花果はなんか突然実がなっている。そうか、このいきなり感は花が咲かないからか、と納得した。実のなり方も急だが、熟し方もこれまた急である。ここ最近、日射しが強い日は特に、昨日青かったのに1日で一気にえんじに色づいている。こうなるともう鳥たちとの競争である。キウイと違ってすぐに食べられて、しかも甘い無花果は格好のごちそうだ。いい感じに色づいたー!と、嬉々として採って見てみたらしっかりとつつかれている、なんてのはザラだ。毎朝起床後、無花果の樹をチェックするのが習慣となった。

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やっと収穫して見たら鳥にやられてるこのがっかり感ときたら(右の青いのは落っこちてしまったやつ)

鳥たちに負けじとタモ網(本当は魚用の網)で収穫する。手で取れたら早いのだが、枝が割と高いので上の方にある実は網が便利だ。

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今年の無花果はなんだかどでかいぞ
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とある日の収穫。傷もあまりなく、なかなかの大きさの子が5個も採れた、うれしい
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ここ最近は毎朝収穫していて、今我が家の冷蔵庫の中には10個の無花果がいる。(昨日は12個いた)我が家の定番の食べ方は、切った無花果にクリームチーズと生ハムをのせて食べるやつ。これはあれだ。無花果のマリアージュだ。てか重婚だ。ワインと一緒に食べるのが最高である。

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そうそう、先日は無花果でアイスを作ってみた。ジェラートみたいな感じでなかなかおいしかった。
無花果2個とアボカド1個(熟していたのが余っていたので入れた)、ヨーグルト1/2カップくらい、生クリーム100g、レモン汁、はちみつ大さじ1くらいをフードプロセッサーでペースト状にして凍らせればできあがり。ただ完全に凍らせるとカチンコチンに固まってしまうので、少し溶けてからざくざくと空気を入れつつ食べるといい感じだ。アイスクリームは空気を含ませるのが肝らしい。

saorin・室長の外ごはん白書 vol. 11 無花果王国、爆誕
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ヨーグルトはあってもなくてもよいらしい。アボカドを入れたので色がグリーンになった

ちなみにこの写真生活手帖の中のtocolierさんが書いているコラムで、無花果のパスタのレシピがあった。次にチャレンジしてみようと思う。
 >イチジクとミントの冷製パスタ【季節を楽しむ生パスタ】
 >イチジクとブルーチーズのショートパスタ【季節を楽しむ生パスタ】

写真生活手帖の編集長、早苗さんも書いていたが、無花果がお店に並ぶと夏~初秋への季節の移ろいを感じるとか。確かにまだまだ気温が高い日が続くけど、少し秋の気配を感じる今日この頃。
我が家は、無花果の収穫を夏の終わりの恒例行事にできるかな。来年も無花果王国の繁栄を願う。

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この記事を書いた人

写真企画室ホトリ 室長

saorin

浅草橋の写真アトリエギャラリー「写真企画室ホトリ」室長。
“写真を形あるものに残そう”をテーマに、教室・ワークショップの開催、写真公募展など、様々な企画・活動を行っている。また、ここ最近は山登りに夢中。 ”山のおみやげクリエイター”としても活動開始。 マイブランド「mt.souvenir」では、自ら登った山の景色を写真にとじこめて作品を制作。 またサコッシュなど山のグッズを、オリジナルのシルクスクリーンでプリントして制作・販売。 
旅と山の写真案内サイト「畔の窓」を運営。(記事を執筆してくれる窓人、募集!)

WEBサイト:写真企画室ホトリ

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instagram:@saorin_fotori