食べること

20.12.29

求めている味が必ずある…ああ上野【Yummyな下町散歩】

シカノ ミエ

シカノ ミエ

懐かしくて新しい、それが今の上野

シカノミエ・求めている味が必ずある…ああ上野【Yummyな下町散歩】

最初に言っておきます。今の上野は、あなたの知っている上野ではありません。

いや、あなたの知っている上野って。あなた次第じゃないのという声もあるかと思いますが、ここは言い切ってしまいます。
だって、あなたにとっての上野って、動物園でキャッキャッしたり、美術館や博物館でちょっとアカデミックな気分に浸ったり、花見のはずだったのに花より団子だったり、上野発の夜行列車に乗ったり、集団就職で降り立ったああ上野駅、だったりで、思い出したシーンはちょっとセピア色だったりしませんか。するでしょう?しない場合はフィルターかけてください。

もちろん、動物園も博物館も健在です。しかし、周りはかなりきれいに整備されて変わりました。上野公園には噴水を眺めながらゆっくり時を過ごしたくなる大きなカフェができて、大道芸人ならぬヘブンアーティスト達はそれぞれの芸を披露して行く人達の目を楽しませています。言葉だけだとパリのようですね。レトロなメリーゴーランドや趣のありすぎた茶店は整備の際に無くなってしまったので、それらも共存できたら本当にパリのようだったのに、それができないのが東京の悪いところですが。

シカノミエ・求めている味が必ずある…ああ上野【Yummyな下町散歩】

しかし食の面では、レトロも健在。しかも今の上野の食の包容力といったら!懐しいあの味も、話題のあの味も、いっそ海を飛び越えてのあの味も、すべて味わえる食のワンダーランド。それが今の上野です。

何を食べよう、どこの国の料理を食べよう

まずは温まるものが欲しい季節にぴったりのものから。
失礼ながら入るのにちょっと勇気がいる、やたらと漢字の目立つ店構えの狭いお店に入ってみます。

シカノミエ・求めている味が必ずある…ああ上野【Yummyな下町散歩】

なんとなく床にものを置くのがためらわれるけれど、店内には活気が満ちている。こういうところは、美味しいに決まっているのです。間違いない。
テーブルのボロボロのメニューも店内に貼っているメニューも漢字がメインで、見た瞬間に昔旅をしたマカオの記憶がよみがえりました。適当にオーダーしたら、鳩の丸焼きが出てきて、頼んだ人が「えー、食べられないー」と動揺していた思い出。
しかし、ここは大丈夫。何を頼んでも美味しいので、むしろわからないまま適当に博打オーダーをしてみるという楽しみ方をお勧めしたいくらい。

シカノミエ・求めている味が必ずある…ああ上野【Yummyな下町散歩】

にら餃子の皮のパリパリと中のぷりぷり感を堪能していたら、隣のテーブルに麻婆豆腐が運ばれてきました。途端にその場の空気が麻辣なスパイスに包まれて、改めて思ったことです。
「ここ、中国かもしれない。」
匂いにつられて追加オーダーするところでしたが、我慢しました。すでにテーブルに乗り切れないほどいっぱい頼んでたので。ちなみに麻婆豆腐は、すっごく辛いけど美味しいに決まってる匂いでした。

シカノミエ・求めている味が必ずある…ああ上野【Yummyな下町散歩】

さて、このお店で特におすすめしたいのは、発酵白菜と豚肉の鍋(酸菜白肉)。白菜の程よい酸味が後をひくと同時に、発酵という言葉が胃と、食べすぎの罪悪感を優しく包んでくれます。
紹興酒の飲み放題1時間1000円というのもあるので、酒飲みの人はやってみるのも一興です。

シカノミエ・求めている味が必ずある…ああ上野【Yummyな下町散歩】
老酒舗

ちなみに、このお店のそばには、孤独のグルメで五郎さんが食べてから、一躍行列店になった羊肉のお店「羊香味坊」もあります。羊肉が苦手と言ってた知人が、「全部美味しい!今まで食べたことがある羊と全然違う。」と言い切った魅惑の羊の世界が広がっています。その後に「アタシが今まで羊を嫌いだったのは、うちの奥さんがスーパーで安い肉を買ってきてたからよ!」と言ってたけど、果たして克服の理由は肉の値段のせいか、プロによるスパイスを駆使した調理のせいか、多分わたしは後者だと思うのですけどね。

古いビルなどの並ぶグレーな一角にポッと明るい水色のお店があって、気になって覗き込んだらキューバサンドのお店でした。キューバサンド⁉初耳です。何それ、美味しいの??
美味しいの!!
プルドポークなどの具材を挟んだパンをプレスしたホットサンドをキューバサンドというそう。パンの表面にもバターを塗ってプレスするので、出来上がりを待つ間に漂ってくるバターの匂いが更に幸福感と空腹感とを増長させてくれます。
ナチョスに乗ったサルサもスパイシーで異国に思いを馳せるのに十分。出来立てをお店で食べるのもよし、狭いので持ち帰りにするのもよし。一度味わってみて欲しい味です。

昭和レトロな空間で一息

甘いものが欲しくなったら、昔ながらの純喫茶に行ってみましょう。シャンデリアにジャカード織りのソファ。ソファのクッションは座ったときに思った以上に沈み、背もたれは垂直。テーブルには最初からガラスの大きめの灰皿が置いてあり、営業マンが一息ついている。
そんなイメージの純喫茶ですが、最近は昭和レトロも人気で、純喫茶でクリームソーダを嗜むのも流行っているそう。

まずは王城。店内に入った途端、外の明るさを店内のシャンデリアが奪って、イメージ通りのザ・純喫茶の世界が広がっていました。自分が昭和の子供だった頃、たまに大人たちの外出にくっついていったときに入ったのもこんなお店だったのかもしれません。大人たちの中で一人黙々とプリンアラモードのプリンにスプーンを入れるわたしは、聞き耳を立てながら大人の世界を覗いているような気がしたものでした。
そんな懐かしさを喚起させるお店で、いちごミルクを。ときめくピンク色の。

外からはまったく想像もつかないゴージャスな空間が広がっているのは、古城。地下のお店に向かう階段は大理石にライオンのモチーフ。店内に入るととにかく大きなステンドグラスに圧倒されます。50年以上の歴史を持つこのお店。訪れる人たちにすごいインパクトを与えてきたに違いありません。お客さんはカメラを持った若い人たちが多く、灰皿はあったけどタバコを吸う人は皆無で空気はきれいでした。

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古城

人気のプリンを食べる賢い方法

散歩の締めのスイーツは、人気のプリンでどうでしょう。自立できるくらいの固さのプリンとほろ苦いカラメル、濃厚なクリームの組合せは、ずばり、パーフェクト!Egg baby Cafeのプリンです。美味しい。美味しいのですが、ここは並ぶこと必至です。でも寒いこの時期は、なるべく並ばずにプリンが食べたいと思いませんか。

ここだけの話なんですが、Cafeの隣のビールとお肉のお店でも、ここのプリン出してるんですよ。食事をしたらデザートにプリンが食べられる。もしくはビールで軽く一杯ののちプリン。ありですよね。ちなみにこちらのお店なら予約もできます。ね、賢いでしょう?

さて、上野(・御徒町)散歩、そろそろ終わりにしましょう。お土産には、CMで有名な「にきにきにきに二木の菓子」の二木の菓子でお菓子の大袋を買ったり、あまりにもディープで日本離れしたアメ横のセンタービルの地下食品街で珍しい食材を買うのがお勧めです。

来年も食べて歩きます

今年は今までとはまったく違う時間の流れ方だった1年でした。当たり前にできていたことができなくなることがこんなにストレスだとは思いませんでしたし、そもそも普通の毎日がこんな奪われ方をするなんて考えたこともありませんでした。なんでもないようなことはやっぱり幸せなんですね。

まだしばらく世界中が右往左往疑心暗鬼で進んでいくのでしょうが、どうか皆様心身健やかにお過ごしください。

来年は少しでも明るい年になりますように!
来年の今頃は、アメ横の賑わいで記事を締められますように!

シカノミエ・求めている味が必ずある…ああ上野【Yummyな下町散歩】
8+

この記事を書いた人

散歩好き

シカノ ミエ MIE SHIKANO

東京の下町在住。 ひまがあれば美味しいものを求め、下町をウロウロしながら、 古い扉の奥に広がっている世界に思いを馳せ、新しいお店の可能性にときめき、 頭上の街灯を写真に収め、塀の上と車の下の猫とにらめっこしている。痩せる暇がない。

instagram:@m_n_deerfield