住まいで撮る。
新しい年が始まりました。年末年始、いつものように住み慣れた自宅でゆっくりと過ごした人、今年こそは!と2年越しで実家に帰省してご家族と待望の再会を果たした人、それぞれ大切な居場所で思い想いの時間を過ごしたのではないでしょうか?今回は、誰もが当たり前のように毎日を過ごしている、住まいで写す写真について書いてみようと思います。
ありがたいことに時おり家族写真を頼まれるのですが、出来れば自宅で撮ってもらいたいのだけれど…とリクエストされることがあります。もともと建築写真に惹かれて本格的に写真を撮り始めた自分にとっては願ってもないことです。撮影では、立ち位置を決めてカメラの方を向いてもらって撮るポートレートとは別に、カメラを意識していないなるべく自然なご家族の様子を、いつも通りに置かれた生活道具、部屋の佇まいと一緒に写すようにしています。
居住空間学
雑誌「BRUTUS」で、年に一度組まれる人気の特集に「居住空間学」があります。アーバン、北欧モダンなど、コーディネーターがスタイリッシュな家具と雑貨をバランス良く並べて洗練された空間を演出するのではなくて、住まい手が普段から実際に使っている部屋で、暮らしているありのままを見せるインテリア雑誌も増えてきました。なかでもこの「居住空間学」で紹介されている住まいは、どれも個性的なものばかり。毎回ではありませんが、手にとってみて印象に残る住まいが見つかった時には買い求めるようにしています。
載っている写真の構図や切り取り方は、自分が撮影する時の参考にもなります。例えば、なるべく空間の奥行きを感じられるような立ち位置を選び、写真のいずれかの対角線上に、人と見せたいモノを配置するような構図で撮ると、見る側の視線を自然と誘導することができます。
今回、私の自宅の他にこれまで撮影してきた中から、掲載を快諾してくれた2組のご家族の住まいを紹介しました。写真をあらためて見ながら、スタイルは異なっていても、それぞれの部屋できっと今日もこんな風にいつもの暮らしが続いているのだろうなと想像しています。
記憶を辿る時に…
価値観に合うから、生活のために必要だからと選ばれた道具、あるいは友人からの贈り物、子供が書いてくれた似顔絵…それらがコーデイネートされた訳ではなく、時間を積み重ねていくうちに自然と空間に馴染んでいく。ご家族にとってかけがえのないそんな大切な住まいで撮影するということは、まさに住まう人の懐に入っていくようなもの。当のご本人たちは、これらの写真を見てもしかしたら何だか気恥ずかしいような、そんな思いを抱いたかもしれません。でも、いつか見返した時には懐かしく、そしてちょっと愛おしく感じてもらえたらいいなと思います。
住まう人のその時々の暮らしぶりによって、住まいは少しづつ変わっていくものです。家族が増えるからと新築した家、やがて子供が成長してその家から自立していき、再び夫婦2人だけの生活になり、そして今度は年を重ねた親と同居するようになる…といった具合に。今の住まいをありのまま写した写真は、そこに住まう人がいつかその記憶を辿っていく時のいい道標になる気がします。