写真のこと

21.06.17

カメラの選び方/デジタル一眼 篇

早苗 久美子

早苗 久美子

素敵な写真を撮りたい、スマホ写真からステップアップしたい。せっかくなら、ちゃんとしたカメラを手に入れて楽しみたい、だからデジタル一眼が欲しい!そんな気持ちの高まりに背中を押されて、意気揚々と家電量販店へ!

カメラ売り場では、様々なメーカーから沢山の種類の「一眼」と呼ばれるカメラが販売されています。大きさも価格もいろいろ…。機能の違いもよくわからない…。自分に向いているのはどんなカメラなんだろう?どうやって選んだらいいんだろう?そんな風に悩んでしまう方も多いかもしれません。

そこで今回は、カメラを選ぶ時に参考にしていただきたいポイントをいくつかご紹介させていただきます。

ファーストステップは自分との相性!

カメラを選ぼうと思うと、機能や性能のことばかり考えてしまいませんか?もちろんスペックは重要なのですが、ファーストステップとして実は“フィーリング”もとても大事なポイントです。つまり、そのカメラを愛せるかどうか。

どんなに機能が充実していても、口コミの評価が高くても、自分自身がそのカメラを持っていて楽しい気持ちになれなければ意味がありません。

カメラの見た目が好みか、持ち心地がしっくりくるかどうか。まずは店頭で実際に手にとって確認してみましょう。手に馴染まなかったり、重すぎたり(軽すぎる場合も…)すると、カメラを持ち歩いて写真を撮りたいというモチベーションが上がりません。

そのカメラを持っていてワクワクできたなら、それだけで最有力候補にしても良いくらい重要なポイントだと思います。好きでもない相手(カメラ)を連れて歩くのは楽しくありませんからね……。

初心者=エントリーモデルがおすすめとは限らない

どのメーカーも、初心者向け、中級者向け、プロやハイアマチュア向け、というように機能や価格の違うカメラがラインナップされています。はじめてのカメラを選ぶ時は、何となく初心者向けのエントリーモデルを選ぶものだと思っていませんか?

エントリーモデルは、写真やカメラの知識があまりなくてもある程度の写真が撮れるように、撮影モードなどが充実しています。見た目にも小型軽量なものが多く、操作ボタンやダイヤル類も少なめのシンプルな作りになっています。

ボタンやダイヤルが沢山あると、それだけで難しそうに感じて心理的なハードルが上がってしまう方にとっては、シンプルな見た目は「自分にも扱えそう」という安心感がありますね。

ただ、これから一眼デビューしようという全ての方に、このエントリーモデルがお薦めかというと、実はそうとも言えないのです。

なぜかと言うと、エントリーモデルは「ある程度カメラに設定を任せて撮影する人にとって分かりやすい」設計になっているからです。逆に言えば、これからちゃんとカメラを使いこなして自分好みの設定でバンバン撮りたい人には、物足りない場合もあるのです。

それは、画質や連写性能などの機能面のことだけではありません。エントリーモデルであっても、基本的な撮影に関しての機能はきちんと備わっています。ただし、大きく違うのが「撮影のしやすさ」です。

先ほど、エントリーモデルはボタンやダイヤルが少なくシンプルな作りだと書きましたが、これは裏を返せば、何か設定を変えたい時にはその都度モニターを見ながらメニューを開き、何階層も奥にある設定項目に辿り着かなければならない、ということなのです。(これが意外とめんどくさい…)

中級機以上のカメラにボタンやダイヤル類が増えるのは、いちいちメニューを開かなくても、ボタンやダイヤルで設定変更できる項目が沢山用意されている為なのです。様々な機能を少ない手数でパパッと設定できます。ファインダーを覗きながら操作できる項目も多いので、いちいちファインダーから目を離してメニューを探す必要がありません。

この「操作の手間」は侮れません。初心者の方ほど、何か設定を変えたいと思った時の手数の多さが心理的なハードル(めんどくさい…)になってしまいます。その結果、結局はカメラ任せのオートでばかり撮ってしまうということになってしまうことも。

初心者だからエントリーモデルを買うものだという先入観を捨てることで、より自分のやりたいことにフィットする機種と出会えるかもしれません。

一眼レフ or ミラーレス一眼

では、実際にデジタル一眼(デジイチ)とか一眼カメラと呼ばれるカメラにはどんな違いがあるのか見てみましょう。

デジタル一眼には、大きく分けて2種類のタイプがあります。一眼レフとミラーレス一眼です。この2つ、実はカメラの仕組みや特徴が異なっています。それぞれどんな方に向いているか、ざっくりした感じとしては……

一眼レフ
 ・手が大きい
 ・動きの早い被写体を撮りたい
 ・より本格的な撮影に取り組んでみたい
 ・大きくて多少重くても「撮ってる感」のカッコ良さにテンションが上がる

ミラーレス一眼
 ・毎日気軽に持ち歩きたい
 ・重い荷物が苦手
 ・旅行に持っていきたい
 ・カメラの見た目にもこだわりたい

では、具体的にどのような違いがあるのか、もう少し詳しくご説明します。以下にあげる4つポイントで、それぞれの特徴をご紹介していきます。

・構造(仕組み)
・ファインダー
・レンズ
・センサー

デジタル一眼レフの特徴

【構造】ミラーとペンタプリズムあり
レンズからの光をミラーとペンタプリズムによってファインダーに導く構造になっています。

カメラ本体にミラーやペンタプリズムが入っているので、ミラーレス一眼に比べると大きく重いものが多いです。しっかりホールドできるグリップ、ボタン・ダイヤル類の操作のしやすさなど、撮影に集中できるよう考えられた作りになっています。

【ファインダー】光学式ファインダー
カメラの中にあるレフレックスミラー(鏡)とペンタプリズムによる反射を利用して、レンズを通ってカメラの中に入ってきた光をファインダーに導きます。つまり、一眼レフのファインダーでは、現実の光そのものを見ているのです。例えば双眼鏡などでものを見るときと同じようなイメージです。

自分の目で景色そのものを見ながら撮影できるので、自分の感動をそのまま写真に撮る感覚が味わえます。

絞りなどの設定を変えても、ファインダー内の見え方は変化しません。写真の仕上がりイメージを想像しながら撮影する必要があります。

【レンズ】交換レンズが豊富
一眼レフは歴史も長いので、様々な交換レンズのラインナップが揃っています。撮りたい被写体やシチュエーションに応じた、より本格的な撮影にも対応できます。

【センサー】「フルサイズ」「APS-C」が主流
カメラ選びでは、センサーの種類(大きさ)も重要です。ざっくり言えば、センサーはサイズが大きい方がより高性能になります。

一眼レフに使われているセンサーは大きめのものが主流で、「フルサイズ(36 x 24mm)」「APS-C(23 x15mm前後)」のものがほとんどです。

PENTAX K-3 Mark III
created by Rinker

ミラーレス一眼の特徴

【構造】ミラー&ペンタプリズムなし
ミラーレス一眼は、その名前の通りミラーもペンタプリズムもありません。その分、小型軽量にできるので、一眼レフに比べて全体的にカメラ自体の大きさは小さめで扱いやすいのが魅力です。

【ファインダー】電子ビューファインダー(EVF)または背面液晶
レンズを通ってきた光を常にセンサーで映像変換して、ファインダー内や背面液晶などに映します。

ミラーレス一眼では、映像を見ながら写真を撮るということです。ファインダーで見えているのも映像なので、見え方のイメージとしてはスマホで写真を撮るときに似ています。

ホワイトバランスや明るさ(露出)の設定が即座に映像に反映されますので、実際に撮れる写真のイメージを確認しながら設定を変更したり撮影したりすることができます。

ちなみに、ミラーレス一眼にはファインダーが備わっていない機種もあります。その場合、背面液晶を見ながら撮影しますが、ファインダーがあった方が写真は撮りやすいです。背面液晶は、例えばよく晴れた日の陽射しの下では見づらく、撮影に集中しにくくなる場合があります。

【レンズ】将来性に期待!オールドレンズの楽しみも。
基本的な撮影に必要なレンズはしっかり揃っています。とは言え、ミラーレス一眼は一眼レフに比べると歴史が浅いですから、一眼レフ用レンズの多彩なラインナップに比べると、まだまだ少ないのが実情です。ミラーレス一眼の人気の高まりに伴って、これから充実していくことが期待されます。

なお、一眼レフ用のレンズも、マウントアダプターを使用すればミラーレス一眼で使うことができますので、レンズの選択肢が狭いという訳ではありません。

また、マウントアダプターを使用してオールドレンズ(フィルムカメラ時代のマニュアルレンズ)を楽しむ方も増えています。オールドレンズは、現在のレンズとは異なる独特の雰囲気の描写得られると人気です。

OLYMPUS PEN E-P7
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SONY ILCE-7CL S
created by Rinker

機能×予算×性格

現在の価格的には、エントリーモデルは7万〜10万円程度、中級機は15万〜20万円程度、ハイエンド機は30万〜50万円以上となっています。

エントリーモデルであっても決して安いものではありませんので、カメラの機能と予算と自分の性格タイプやモチベーション(趣味は形から入るタイプとか、良い機材の方が燃えるとか、ゆっくり一歩ずつステップアップしたいとか)のバランスを考慮したカメラ選びをおすすめします。

・どんな写真を撮りたいか(機能面)
・予算はどれくらいかけられるか(予算面)
・自分の性格タイプ(モチベーション)

カメラ売場の店員さんや写真に詳しい友人などにカメラ選びの相談をするときも、上の3つの側面についてきちんと伝えると、より自分に合う機材を紹介してもらいやすいと思います。

カメラは道具。そして、相棒。

カメラは写真を写しますが、あくまでも機械であり、道具です。写真を「撮る」のは、あなた自身!カメラが自分の感動を察して、勝手に何となく良い感じに写してくれるものではありません。だからこそ、そのカメラと仲良くなれるかどうかが重要です。

道具であるカメラを、自分が愛着を持って使えるようになれば、きっとそのカメラは自分にとって相棒のような存在になってくれるはずです。

ぜひ、楽しんでカメラを選んでくださいね。


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この記事を書いた人

編集長/写真家

早苗 久美子 Sanae Kumiko

写真家、NADAR店長、写真生活手帖編集長。 南青山の写真専門ギャラリー「NADAR(ナダール)」にてギャラリー運営の実務全般を担当するほか、写真教室やワークショップの講師としても活動。写真家としても継続的に作品を制作・発表しているほか、「写真と言葉」をテーマにした活動の一貫として、自身が撮影した写真でポストカード制作し定期的にお手紙をお送りする「お便りプロジェクト」にも取り組んでいる。

WEBサイト:草原の夢

WEBサイト:東京・南青山/写真ギャラリー&写真教室のナダール

instagram:@kumiko.sanae_nadar