食べること

20.09.05

和菓子と子どものころの記憶【和菓子と写真】

金森 祐芽

金森 祐芽

子どもの頃に、どんな和菓子を食べていましたか?

記憶に残っているものは?

私の家族は甘いもの好きなので、良くお菓子を食べました。家族の誕生日に限らずケーキや季節の果物、そして和菓子も。
和菓子と言えば、やはり季節やイベントごとにちなんで食べることが多かったように思います。桜餅、柏餅、おはぎなど、たとえスーパーで買ってきた桜餅でも、一丁前に湯呑みで煎茶をすすりながら家族で食べれば美味しいものです。おはぎがご飯がわりに食卓に並ぶのも、特に違和感がありませんでした。

さて、“頂きものはまず仏壇へ”という家も多いのではないでしょうか。お菓子や果物を買ってきたり頂いたら、要冷蔵の物でなければ、私の家ではまずは仏壇へ供えられました。物々しく箱に入った贈答物を前にチーン、と鳴らしお線香をあげる…のは稀なことで、お仏壇がある居間はテレビがある部屋でもあり家族が一番良く過ごす場所。そこへ供えたらたちまち、知らぬ間に3人の小人(子ども)たちがせっせとお菓子を消費します。焼き菓子や乾きものは特に減りが早い。しょっぱいお煎餅は両親のお酒のつまみにもよろしい。

では逆に、
いつまでも減らないものとは…

頂きもの、何となく高そう、そして日持ちするがゆえに後回しにされがちな和菓子たち。

金森祐芽・和菓子と子どものころの記憶
虎屋の羊羹
金森祐芽・和菓子と子どものころの記憶
榮太樓の飴
金森祐芽・和菓子と子どものころの記憶
竹風堂の方寸

日持ちするから今日でなくても良い、その思い。

賞味期限を数えつつ、うっすらホコリさえ被ってしまうそれらを、どこか後ろめたい、なんともいえない気持ちで眺め、しかし後から来たお煎餅に手を伸ばす…。嫌いなわけではないけど、選ぶ優先順位は決して高くない。なんとなく開けたら最後、荷が重ような気がして誰かが開封するのを待っている。そんな存在でした。その後ろめたさ故でしょうか、不思議と今となっては好きで好んで食べていたものよりも、記憶に残るものになっています。だって味は抜群に良いのだから。

もちろんこの御三家は今も活躍中。

時は流れ、とらやの羊羹の濃厚さ、榮太棲の飴のコク、竹風堂方寸の口どけ、それらが分かるようになったのは、和菓子好きになり始めてからのこと。そう、この3つは甘いお菓子でありながら、大人の味だったのかもしれません。
今では可愛らしい一口サイズや小分けも販売されており、だいぶ敷居が低く手に取りやすくなりました。この度このコラムを書くに際し、それぞれの店で改めて買い求めてみる。そうそうこれ、と思いながら一口味わえば、懐かしさに再び出会う新鮮さ。

子どもの頃を振り返るのは、懐かしさばかりではなく新しい発見でもあると思います。

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この記事を書いた人

和菓子が好きな会社員

金森 祐芽 Yume Kanamori

茨城県出身、多摩美術大学美術学部芸術学科卒業、現在は会社員。 和菓子と写真のほか、美術鑑賞・人形制作・旅行・お酒・映画も好き。