写真のこと

22.05.27

My Hasselblad Story Vol.4/自信喪失と試行錯誤と

早苗 久美子

早苗 久美子

ハッセルブラッドをメインカメラとして使う私が、ハッセルブラッドを手に入れてから“愛機”となっていくまでの約10年の思い出話を語る「My Hasselblad Story」。今回は、正方形フォーマットが苦手だと気づき、自信喪失。そこからの試行錯誤のお話です。

【これまでの My Hasselblad Story】
 ・Vol.1:ハッセルブラッドとの出会い
 ・Vol.2:ファーストロール
 ・Vol.3:ましかく写真は難しい

正方形フォーマットの何が苦手か

ましかく写真の何が難しく感じるのかという言うと、前回も書いたが、まずは構図。35mm判に慣れた私にとっては、正方形では“間”とか“余白”がどうにも作りにくかった。

早苗久美子・My Hasselblad Story Vol.4
あぁ、中途半端だ。一体私は何がしたかったのか…。

私は写真を撮る時、ファインダーの中で気持ちの良い構図・切り取りを探すのだけれど、その際、どこかで“重心”のようなものを感じている。ウェイトのバランスが絶妙にはまるところを探しているというか…。(伝わるだろうか…)

そういう意味で言うと、正方形の重心は、とにかく“真ん中”。微妙に上下左右に振ると、途端にバランスを欠いて気持ち悪く感じてしまう。ならば割り切って、ど真ん中で撮ればいいだけの話なのだが、そうすると、もう一つの難しさに直面することになった。

それが、画角と撮影距離。

ちょっと広い。そして遠い。

6×6フォーマットの場合、焦点距離の35mm判換算は0.55倍。なので、私が使っている「Planar C 80mm F2.8」というレンズは、いわゆる標準レンズに相当する。これが、意外と広い。80mmの0.55倍は44mmなので、50mm標準の画角よりほんの少し広い。

当時の私は、比較的狭い視点で写真を切り取る眼差しだったので、80mmレンズの画角がとても広く感じた。余計な部分を排除しようすると、被写体に近づいて撮る必要が出てくる。が、このレンズ、意外と寄れないのだ。

「Planar C 80mm F2.8」の最短撮影距離は0.9m。つまり、90cmより近づけないということ。90cmは、けっこう遠い。画角が広く感じるから近づきたくなるのに、90cmより近くには寄れないというジレンマ。

早苗久美子・My Hasselblad Story Vol.4
あと一歩が寄れない。ピントも合ってない…。

あぁ、もう!

プロクサー or 150mm

このストレスを解決する方法は2つ。画角を狭くするか、寄れるようにするか。

80mmレンズで近づいて撮るには、いわゆるクローズアップフィルター(純正のものは「プロクサー」と呼ばれる)を付ける方法がある。私ももちろんプロクサーの購入も考えたが、この時点でハッセルを使う必要性をあまり感じていなかった上に、うまく使いこなせなくてモヤモヤしていた時期だったので、そんなカメラのためにお金を使ってわざわざアイテムを増やすのは乗り気になれなかった。

一方、画角を狭くするのは、望遠レンズを使えば可能。幸い(?)譲り受けたハッセル一式の中に「Sonnar C 150mm F4」というレンズもあった。これなら、すぐに試せる。ということで、まずはレンズを付け替えてみることに。

Sonnar C 150mm F4 というレンズは、80mmレンズよりも長さがあって重い。Hasselblad 500c/mのボディに150mmをつけると、その姿はまるで鼻の長いアリクイのよう。急にスタイリッシュさがなくなった。ハッセルってこんなんだっけ?と思いつつ、背に腹は変えられない。見た目のことは諦めて、まずは撮ってみるしかない。

早苗久美子・My Hasselblad Story Vol.4
ふむ。
早苗久美子・My Hasselblad Story Vol.4
ふむふむ。
早苗久美子・My Hasselblad Story Vol.4
中望遠の強みを発揮して猫ちゃんも撮れた。
早苗久美子・My Hasselblad Story Vol.4
画角感は悪くない。

結果、80mmより狭い画角は撮影しやすく、なかなか良い感じ。これは、意外と悪くないかもしれない。

今までは、撮影する度にモヤモヤしていたけれど、この時はあまり引っ掛かりを感じずに撮影を進められた。リズム良く撮れれば、12枚なんてあっという間だ。

150mmレンズを付ければ、私もハッセルを使えるかもしれない。そんな手応えを感じて、かすかな希望が生まれてきた。まぁ、レンズが重くて、長くて、嵩高いけど。

そう。レンズが重くて、長くて、持ち歩くにはちょっと邪魔に感じるくらい嵩高いけど、ね….。

(次回へつづく)

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この記事を書いた人

編集長/写真家

早苗 久美子 Sanae Kumiko

写真家、NADAR店長、写真生活手帖編集長。 南青山の写真専門ギャラリー「NADAR(ナダール)」にてギャラリー運営の実務全般を担当するほか、写真教室やワークショップの講師としても活動。写真家としても継続的に作品を制作・発表しているほか、「写真と言葉」をテーマにした活動の一貫として、自身が撮影した写真でポストカード制作し定期的にお手紙をお送りする「お便りプロジェクト」にも取り組んでいる。

WEBサイト:草原の夢

WEBサイト:東京・南青山/写真ギャラリー&写真教室のナダール

instagram:@kumiko.sanae_nadar