写真のこと

20.10.16

相手はあなたの鏡【写真生活手帖】

林 和美

林 和美

林和美

被写体への想い

笑っている人を見ると、なんだかこちらも笑顔になりますよね。相手を笑顔にしているのか、自分が笑顔にされているのか、どちらかと言うことではなくて、お互いなのです。お互いが、お互いの鏡なのです。

昔、知り合いのカメラマンさんが話してくれたことがあります。スタジオで人を撮るとき、やはり最初はお互い探り合いな感じなんだそうです。でも、撮影が進むにつれ、お互いが乗ってくる。大げさに言うと、お互い自分を見せ合う。そうすると、ある時バーンと大きな音がする感じで、お互いがひとつになるような、突き抜ける瞬間があるのだと。

それがあるから人を撮るのは、やめられないのだそうです。また、有名な話だと思いますが、人を撮るカメラマンだけでなく、花や物を撮るカメラマンも、撮影するときには、話しかけながら撮影する方もいらっしゃいます。結局、被写体への想いが大切なのでしょう。

風を感じる

私は被写体と自分のまわりにあるものは、風なのだと思います。漂ってあると言う感じではなく、必ずどこかからどこかへ吹いていると。追い風なのか向かい風なのか、強いのか弱いのか、風を感じる力とそれに乗る力や、やり過ごす忍耐を常に備えていたいものです。相手は今どんな気持ちでいるのか、それに対して自分はどう思っているのか、それによって風が変わってきます。それは確実に写真に現れてきます。

自分の鏡

人を撮る場合、長く関わり撮影する人もいれば、撮影現場での短い時間で撮影する人もいます。どちらの場合も大切な事は、時間の長さではなく被写体と向き合う姿勢、相手との関係性です。人はどんな時も自分ひとりでは、成り立たない。自分が心を開いた分だけ、相手も心を開く。ファインダーを覗くときは、相手を尊敬しつつ真剣勝負で挑む。そして感謝する。そうすることで、きっと自分の鏡は磨かれて輝くのです。

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この記事を書いた人

代表

林 和美 Hayashi Kazumi

写真生活手帖/代表、 フォトライフ・プランナー、 写真家、ギャラリー NADAR 主宰。 三重県生まれ。大阪芸術大学卒業後、広告代理店、フォトエィジェンシー勤務を経て現在に至る。 写真集 「ゆびさき」(青幻舎) 「装幀写真」(ナダール書林) 著書 「写真生活手帖」(ピエ・ブックス) 「写真生活手帖〜実践編」(ピエ・ブックス) 「女性のためのカメラレッスン」(大泉書店)

WEBサイト:林和美写真画廊

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