写真のこと

21.10.08

My Hasselblad Story Vol.2/ファーストロール

早苗 久美子

早苗 久美子

ハッセルブラッドをメインカメラとして使う私が、ハッセルブラッドを手に入れてから“愛機”となっていくまでの約10年の思い出話を語る「My Hasselblad Story」。今回は記念すべきファーストロール(簡単に言えば、試写)のお話。

おっかなびっくりフィルムを入れる

さて、有難いご縁により伯父のところから私の元にやってきたハッセルブラッド(Vol.1参照)。カメラが問題なく動くのかどうかもわからないので、まずは撮ってみないことには始まらない。

ということで、意気揚々と撮影へ…。と、言いたいところだけれども、撮る前に最初の難関が待っていた。そう、フィルムの入れ方がわからない問題。

ハッセルはお作法(カメラの操作手順)を間違えると故障するという話を聞いていたし、とりあえず適当にやってみるなんて勇気はない。しかも、初めてブローニーフィルムを使うので、まずこのパトローネのないフィルムをどう扱ったらいいのかもわからない。と言うわけで、本を見ながらチャレンジ。

きっと今の時代だったら動画とか見ながらやるだろうけれど、当時はまだ今ほど動画の時代ではなかった。WEBで調べればハッセルブラッドのフィルムの入れ方を解説したブログくらいはあったが、私は古い人間なので、何かを学ぶときの基本は本ですよ、本(by 元アルバイト書店員)。

ちなみに参考にした本はこちら。おすすめ。
★写真家・藤田一咲さんの著書『ハッセルブラッドの日々』(エイ出版社)

あと、今ならこちらの本も。
★『フィルムカメラの楽しみ方 -カメラの知識、撮影から現像・引き伸ばしまで』(マイナビ出版)

こちらは、私も35mm判フィルムカメラの章で執筆をお手伝いした一冊。出版から少し時間が経って、カメラ屋さん等の情報は古くなってしまっている部分もあるけれど、35mm判から大判のこと、暗室のこと、写真屋さんのこと、等々フィルムカメラを楽しむための情報を掲載。ハッセルブラッドの使い方も載っている。個人的には、ゆるいテイストなのに、さくっと大判カメラまで載せてあるところが好き。(あ、ちゃっかり宣伝を入れてしまった…)

シャッター音が気持ちいい

フィルムも何とか入れられたところで、いよいよ撮りに行ってみることに。いざ、大いなる旅立ち!という気持ちではあったが、実際には自宅の近所を散歩した程度である。だって、試し撮りだし。

自宅周辺の公園などをプラプラと散歩しながら、まずは気軽に撮影。いつも通りの感覚で気になった光景にカメラを向けてシャッターを切る。

ボシュッ
という、大きなシャッター音が鳴り響く。

ちなみに、このシャッター音の表現の仕方も、人によっていろいろ言い方が違う。バコンッとか、シュボッとか、ボスッとか、ガシャコンッとか。

いずれにしても、このシャッター音と手に伝わる振動が、中判カメラで撮っているのだということを意識させてくれて、テンションが上がる。大きな音なのだけれど、これが意外に心地よい。調子に乗ってシャッターを切っていたら、あっという間に撮り終わった。

なんせ、このカメラでは、ブローニーフィルム1本で12枚しか撮れない。普段は35mm判の36枚撮りを使っていたので、いつも通りの撮り方をしているとあっという間に終わってしまう。でもいいのだ。だって、試し撮りだし。

帰宅して、再び本を見ながらフィルムを巻き取り、緊張しながらそっと取り出す。フィルムを巻き止めておくためのシールで封をして、一安心。さっそく写真屋さんに現像に出した。

そして出来上がってきた写真がこんな感じ。

早苗久美子・My Hasselblad Story vol.2
早苗久美子・My Hasselblad Story vol.2

これが記念すべき私のハッセルでのファーストロール…。(何だか全体的にモヤっとしてる?ピントどこにもきてない?手ブレしちゃったかな。やっぱりミラーショック大きいし、まだ慣れてないからしっかりホールドできてないのかも?)

早苗久美子・My Hasselblad Story vol.2

やっぱり、花にピントがきてない…。少し後ろの草に合ってる。これは、もしかしたらピントがズレているのかもしれない。

そう判断して、メンテナンスに出すことを決断。というか、実は試し撮りの結果にかかわらず、一度メンテナンスに出す心づもりだった。せっかく良いカメラなのだから、この先長く使うためにもきちんとオーバーホールしておくべきだと思っていた。幸運にもハッセルブラッドをタダで手に入れたのだから、きちんとメンテナンスして長く使えるようにするのが譲り受けたものの役目だろう、と。

と言うわけで、すぐにハッセルブラッドの修理で定評のあった修理士さんの元へ持って行って、まるっと一式預けてしまった。戻ってくるまで数ヶ月掛かるとのこと。それも致し方ない。

ちなみに、少し補足すると、この最初の1本目のフィルムでピンボケが多かったのは、ピントがズレていたのもあったかもしれないが、後から思えば、私が不慣れだったせいもあったと思う。どんなカメラでも、初めて使うマニュアルカメラのピントのヤマ(ピントがピッタリ合うピーク)を掴むのには少し慣れが必要で、最初はある程度失敗するのも仕方がないことだと思う。

微かな不安

そんなこんなで、手に入れてすぐにしばしのお別れとなったハッセルブラッド。でも実はこの時、心の端っこに微かな不安が芽生えていた。

(…ハッセルブラッドって、みんなが言うほど、良い?)

なにせ試写したファーストロールはことごとく手ブレ&ピンボケだったので、これは!という手応えを感じる1枚をまだ撮れていない。それに、何だか正方形って撮りにくいような…。

いやいやいやいや、修理から帰ってきてからが本番だから!きっとハッセルの楽しさにハマるに違いない!と、自分を納得させていた。

今思えば、これは予感だったのかもしれない。この時の微かな不安が、私とハッセルブラッドの関係が一筋縄ではいかなくなる始まりだった。

(次回へつづく)

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この記事を書いた人

編集長/写真家

早苗 久美子 Sanae Kumiko

写真家、NADAR店長、写真生活手帖編集長。 南青山の写真専門ギャラリー「NADAR(ナダール)」にてギャラリー運営の実務全般を担当するほか、写真教室やワークショップの講師としても活動。写真家としても継続的に作品を制作・発表しているほか、「写真と言葉」をテーマにした活動の一貫として、自身が撮影した写真でポストカード制作し定期的にお手紙をお送りする「お便りプロジェクト」にも取り組んでいる。

WEBサイト:草原の夢

WEBサイト:東京・南青山/写真ギャラリー&写真教室のナダール

instagram:@kumiko.sanae_nadar