華道家 小春丸
「写真生活手帖」の編集長、早苗さんが愛機のハッセルブラッドで撮り続けている「flower is…」と題した美しい「花」の写真をご覧になった方も多いのではないかと思います。「花」というのはその神秘的な造形や色どりに目を奪われて、またいつかは散りゆく儚さも相まって思わずレンズを向けてしまう存在、自分も写真を始めた頃から今にいたるまで、たくさんの花を撮ってきました。
「花」といえば「見る」「撮る」ものだった自分に、「生ける」という新たな風を運んでくれたのが、たまたま近所の行きつけの珈琲屋で生け花の展示をしていた、華道家の小春丸さんとの出会いでした。Red Bull の空き缶に生けるというその展示の柔軟な発想がとてもユニークだなと興味を持ち、控えめながらもその奥に揺るぎない強さを感じる小春丸さんの人柄にも惹かれ、それからしばらく展示がある度に写真を撮らせてもらっていました。程なくして小春丸さんの生け花教室に自分も通うようになり、今年で8年目になります。
生け花ライブ
小春丸さんはこれまで濱田庄司邸や水戸芸術館の広場をはじめ、様々な場所で生け花ライブを行ってきました。背丈を超えるほどの枝ものと対峙しながら、即興的に淀みなく生け込んいくそのパフォーマンスは、ごく小さな作品を作るのでさえ手を焼いている自分には、想像をはるかに超えるスケールで、観客として目の前で見ていても、その立ち回りから枝さばきまで息を呑んで見入ってしまうほど。
何もなかった場所に作品が徐々に立ち現れてくる様は、草木や花が持つエネルギーを一点に集めて解き放つ、まさに生まれたと表現できるものでした。
小春丸さんがレッスンの時よく言われるのが「必ず美しいところがあるはずだからそこを見つけて生かしてください。」という言葉。同じ花材であっても、枝ぶりや花のつき方は違うので、それぞれの美しい部分を引き立ててあげるように生ける。それは、こういう大きな作品であっても変わらないことだと、後に小春丸さんは話されていました。
花のある暮らし
いつかこのような大きな作品に挑むことがあるかもしれませんが、それはまだまだ先のこと。今は手持ちの花器を使い、暮らしの中で花を生かすことを一番に考えています。小春丸さんのご自宅での月に一度のレッスンでは、手本の作品があるわけではなく、生徒それぞれが自由に生けることができます。途中で気になるポイントを教えて頂きながら手直しすること何度か、完成した作品を奥の和室に設えます。小春丸さんご自身で墨汁を塗られたという黒の襖が、色どりをより一層引き立ててくれています。
自らの手で生けて飾ってみると、どんな小さな作品でも花には空間を一変する力があることを実感することができます。そして、花を飾ろうと思えば自然と部屋を片づけなきゃいけないな、という気持ちになります。花のある暮らしは、それだけで気持ちも空間も整えてくれる特効薬のようなものかもしれません。
◎華道家 小春丸 / KOHARUMARU
個展、生け花ライブ等で幅広く活躍している。
流派にとらわれない自由な発想と作風で
陶芸家、木工作家、舞踏家とのコラボ多数
[instagram]
https://www.instagram.com/koharumaru11/