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21.03.28

道具のこと – 1 -【染織と日々のすきま】

柳川 千秋

柳川 千秋

この道具、見たことがありますか?

柳川千秋・道具のこと - 1 -【染織と日々のすきま】

上部にはレンズがついています。

柳川千秋・道具のこと - 1 -【染織と日々のすきま】

土台の部分には目盛がついています。場所によって目盛の幅が違います。ひと目盛が1mmの部分と、鯨尺5厘の部分、曲尺5厘の部分があります。

柳川千秋・道具のこと - 1 -【染織と日々のすきま】

レンズを覗くとこんなふうに見えます。

この道具、織るときに欠かせないルーペなんです。
名前が分からなかったので検索してみると、どうやら縞見(しまみ)ルーペとか、織物ルーペと呼ばれるもののようです。

着物や帯の長さの単位は、今でも鯨尺(注1)が使われていますが、メートルを使うこともあります。両方の尺度の目盛がついているのはとても便利です。

(注1)鯨尺(くじらじゃく)とは ものさしのひとつで、丈、尺、寸、分で表されます。1丈は1尺の10倍、1尺は37.8788cm、1寸は1尺の1/10、1分は1尺の1/100です。

柳川千秋・道具のこと - 1 -【染織と日々のすきま】

折りたたむと小さくなるところもかわいくて気に入っています。

織りものは、たとえ同じ糸を使っていたとしても、ふわっと柔らかい布もあれば、しっかりした硬めの布もあります。それらは何が違うと思いますか?
そう、密度です。
 
糸と糸の間に隙間が多ければ密度が低く、柔らかい布になります。
反対に糸と糸の間がぎゅっと詰まっていると密度が高く、硬い布になります。

密度は糸の本数と太さで決まります。例えば、緯糸(よこいと)の密度を確認するには、経糸(たていと)1cmあたりに何本の緯糸が入るかを数えます。そんなときに役立つのがこの道具です。織っている途中で密度が一定になっているか確認したり、布や糸の状態を確認したりするのにも使います。

このルーペは見えないところを見せてくれます。普段当たり前に使っている道具ですが、よく考えるとそれってなんだかすごいことだなぁと、ふとそんなことを思いました。

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この記事を書いた人

染織家

柳川 千秋 Yanagawa Chiaki

1988年神奈川県生まれ。元理学療法士。2016年より染織を学び始める。 糸を染め、機織りをして、着物や帯、小物などを制作している。

WEBサイト:https://yanagawa-chiaki.studio.site

instagram:@yanagawa_chiaki