よく「写真は機材じゃない」などと言われる。これは「良い機材を使うから良い写真が撮れる訳ではない」という意味である。もちろん、その通りだと思う。また、「カメラなんて何でも良い」と言われることもある。これは「写真は機材じゃない」の別バージョンの言い方で、だいたい同じ意味合いで使われることが多い。
が、私はこの「カメラなんて何でも良い」については、素直に「その通り!」とは言えないのだ。なぜなら、私自身が写真を撮るにあたって「カメラは何でも良い」とは思っていないから。
カメラが使いたくて写真を撮る「カメラ好き」な方もいるけれど、私は写真が撮りたいからカメラを使っている。でも、カメラなら何でも良い訳ではない。機材のスペックの良い悪いとか、値段の高い低いとか、そういうことは重要ではないけれど、自分が撮りたいものを撮れるかどうか?というのは大事だ。そういう意味では、機材も大事と思っている。
そこで、今回から何回かに分けて、私が現在メインで使っているカメラ「Hasselblad(ハッセルブラッド)」のことを書いてみようと思う。ハッセルブラッドは「良いカメラ」だと言われる。中判というサイズの大きなフィルムを使うから画質が良く、カメラ自体の作りや操作系も、撮れる写真の描写も、プロ向け機材としての地位をしっかり確立しているカメラだ。でも、そのことが私の「愛機」である理由ではない。
今ではすっかり相棒と呼べるくらいの存在となったこのカメラとも、実は、仲良くなるにはそこそこ時間がかかった。手に入れてから約10年。私がどうやってこのカメラと付き合ってきたのか、紆余曲折を語ってみたいと思う。
あらかじめ断っておくと、これから私が書こうとしているのは、ハッセルブラッドの使い方を知りたいとか、レンズ描写の特性を知りたいとか、そういう部分では役に立つ情報は提供できない。私がハッセルを手に入れてメインで使うようになるまで、色々なことがあったその歴史というか思い出話(?)なので、正直誰かの役に立つものではないと思う。許して欲しい。
Hasselblad 500c/mがやってきた
ということで、まずは、私がハッセルブラッドを手に入れた経緯から。
多くの中判フィルムカメラユーザーに支持されてきたハッセルブラッドが私の手元にやってきたのは2012年1月のこと。
当時は6×6(ロクロク)フォーマットのいわゆる「ましかく写真」の人気が盛り上がっていた頃で、私もハッセルの存在は知っていたし、それが元々はプロが使うような非常に良いカメラだということも認識していた。
でも、このカメラを私が使うことになったのは本当に偶然だった。積極的に手に入れたというよりは、“縁”による巡り合わせによって私の手元にやってきたのだ。
元々の持ち主は、私の伯父だ。伯父が訳あって家を整理する際に、今ではもう使わないというハッセルを譲ってくれた。私は知らなかったが、伯父は写真が(もしくは、カメラが?)趣味だったらしい。親族の中に中判フィルムカメラを持っている人がいたことにまず驚いたし、予想外すぎる展開だったけれど、「ハッセルいる?」と聞かれたら、そりゃぁもう、もちろん大喜びで「欲しい!」と即答したのは言うまでもない。
かくして私のところにやってきたのが、Hasselblad 500c/mというカメラだ。レンズは、いわゆる標準レンズに相当する「Planar C 80mm F2.8」と、望遠レンズ「Sonnar C 150mm F4」の2本。
その当時にスマホで撮った「手に入れた記念写真」がこちら。
当時は、自分で買ったデジタル一眼レフ(Nikon D90)と、母から譲り受けたPENTAX SPとNikon F80、中古で手に入れたNikon F100を使っていて、中判フィルムカメラは初めてだったし、6×6フォーマットに憧れていたので、嬉しくて仕方なかった。
このハッセル、伯父の元でもしばらく使われていなかったらしく、カメラの状況もわからない状態だったので、まずはこのワクワクを胸に動作確認を兼ねて試し撮りをしてみることに。
その話は、また次回。