日本の猫の日は2月22日。
世界猫の日は8月8日である。
しかし、猫飼いには毎日が猫の日である。永遠に続いてほしいと願ってしまう猫のいる日々は、しかし、いつかは終わってしまう。でも、それでいいのだ。猫を飼う人は決して飼い猫より先に死んではならない。猫を後に残してはいけない。
猫様に(そう、猫様である)お仕えするにあたっては、いくつか重要な条件をクリアしなくてはいけない。
先に死んではならないというのは絶対に破ってはならない血の掟ではあるが、不可抗力ということもある。であれば、我々下僕は最悪の事態を回避すべく、あらゆる手を尽くしておくべきである。
お仕えした猫様の数は少ないものの、下僕歴は25年以上。家族で飼っていたという経歴まで合わせると歳がバレるので言いませんが、それなりに経験がございます。コロナ禍で安易に癒しを求める人類を諌めるべく、下僕が下僕たり得る条件というものをいくつか考えてみた。
生涯お仕えし通す覚悟やら愛情なんていうものは、当たり前すぎて条件にするまでもない。というか、そんな生っちょろいものだけでは猫様を幸せにできない、と私は思っている。
条件その1は、なにより財力である。身も蓋もないが、愛だけでは猫様は飼えないのである。
猫は金がかかる。犬だって同じである。フェレットだってインコだって金魚だって同じである。フードや猫砂は大した額ではないかもしれないが、20年間払い続けられるだろうか。美味しいごはんや清潔なトイレ、快適な寝床、いつでも日向ぼっこができて新鮮な水が飲める、そういう環境を整え、維持していかなければならない。何故なら基本的猫権だから。
そして、猫様の医療費は単位が諭吉。あなたの猫様はこっそり持病を持っているかもしれない。もしかしたら将来、大きな手術が必要になるかもしれない。夜中に突然見たこともないような緑色のゲロを吐いて、救急診療で何万も払うことになるかもしれない。車を持っていなければタクシー代も。
更に、ひとたび下僕になると、猫様ご入用のものには財布のひもが形骸化する傾向にある。対するペット産業もよく心得ていて、猫様グッズにはちゃんと手が届きやすい絶妙なお値段をつけてくる。人類は一人当たりベッド一つなのに、猫様はお一人様なのにベッドが5つ、なんてことあるある。気に入っていただけないかもしれないリスクを負いながら、一つでもお気に召せば有難き幸せ。もうプライスレスである。
それはともかく、猫を飼う以上、一定以上の財力を、猫が生きているであろう期間は保ち続けることが第一のもっとも大切な条件である。
条件その2は、時間である。
猫様は生き物であり、人とは違うものの感情のある生き物である。仕事が忙しくて猫に構うヒマがない、なんて言ってはならない。深夜に帰ろうと、早朝から出勤しようと、猫様が「構って♥」という時には、ボロ雑巾のように疲れていようとも、有難くお相手するべきである。
時間は作るもの。猫様だって1時間も2時間も遊び続けるわけではない。あの方々は飽きっぽいので、20分も全力でお相手すれば疲れてくれる。下僕たるもの、多少の睡眠時間を削れば良いのである。ただし、ここで大切なのは「全力で」。全力でやらないと、1日20時間も寝ている猫様は疲れてくれない。家が狭くたって、真剣に追いかけっこをし、プロレスごっこをし、狩り狩られるハンティング練習をすべきである。
猫様がやがて歳を取り相応の年齢ともなると、望んでもそれは叶わなくなってしまう。今、猫様が若々しく元気いっぱいに飛び回っている幸せを噛みしめつつ、深夜早朝の蹂躙を甘受すべきである。
ところで、子猫の場合はもっと大変である。
多くの人間の子供がそうであるように、1日に何度も短時間に深ーく眠り、無尽蔵の体力で我々を翻弄してくる。下僕の生活時間に合わせてくれるようになるまで、猫様の情操教育と健康のためにひたすら頑張るしかない。子猫ちゃんは奇跡のように可愛いけれど、その辺の覚悟と体力と時間は必要になるのです。
条件その3は、サポート体制である。
我々下僕も動物の端くれであるから、病気をすることもあり、ケガをすることもある。「不慮の」ということだってある。
そんな重大な事だけではなく、少し長く出張するとか、ちょっと旅に出るとか、そういった時に助けてくれる存在を確保しておくことで、猫飼い生活が格段に楽になる。
家族でもいいし、友人でもいいが、日頃から猫様に対する考え方をすり合わせしておく必要がある。いつも最悪のことを考えるのではなくて、一度とことんシミュレートして用意をしておけば、毎日心配せずに楽しく暮らせるというものである。
実際、両親を相次いで亡くした知り合いは、残された猫と暮らしていたが、自分が思わぬ大病をしてしまった。すぐに入院しなければならなかったが、遠くの兄弟を頼ってなんとか猫様を預けることができたのだそうだ。猫様はその後、天寿を全うされたそうです。
我が家は子供もいない夫婦だし、兄弟は猫アレルギーだし(猫大好きなのに)、親も老齢になってしまったので、シッターさんを活用している。(ここでも金である)
若いお姉さんが好きな我が家の白黒男子は、シッターさん大歓迎。誰でもウェルカムな性格で気楽ではあるけれども、中年な飼い主としては微妙な感情を持っております。
猫様の事になると心配性な下僕は、とある猫様NGOにお金を払い、我々の万が一の時は確実に保護し、新しい家族を見つけてもらう契約を結んでいる。新しい家族が見つからなければ、シェルターで一生面倒見てくれる。そのNGOが本当にちゃんとそうしてくれるのか、絶対の保証ではないかも知れないけれど、やらないよりはと納得して契約した。年下の兄弟にも契約書の写しを保管してもらい、よく理解してもらっている。我々が払ったお金は、今シェルターにいる猫様達の生活費になるのだそうだ。
つい熱く語ってしまった。
久々の投稿なのに、あまり楽しくない話で恐縮です。次回は猫様の可愛いポイントの深堀りでもしようかと考えております。
猫様の幸せを追求するのが下僕のシアワセ。
今日も明日も猫様がご機嫌に過ごせるよう、下僕は誠心誠意お仕えしていくのであります。