暮らしのこと

23.05.15

わらびのはなし【染織と日々のすきま】

柳川 千秋

柳川 千秋

4月のはじめに、実家からわらびが届きました。

柳川千秋・わらびのはなし【染織と日々のすきま】

わらびはそのままではアクが強くて食べられないので、アク抜きをします。今回は木灰(木を燃やして灰にしたもの)を使いました。
この木灰、草木染の媒染でも使います。先人の知恵、すごいですね。

わらびを鍋に入れ、木灰をふりかけます。
量は、なんとなく全体に行き渡るくらい。

柳川千秋・わらびのはなし【染織と日々のすきま】

そこへ熱湯を注ぎ、時間を置きます。

柳川千秋・わらびのはなし【染織と日々のすきま】

pHを測ってみます。

柳川千秋・わらびのはなし【染織と日々のすきま】
柳川千秋・わらびのはなし【染織と日々のすきま】

pH10くらいでしょうか。

アクは水溶性だそうですが、水につけるだけでは抜けません。アルカリにより繊維を柔らかくし、また熱を加えることでアクの成分が外に溶け出てくるそうです。

一晩置いたところ。

柳川千秋・わらびのはなし【染織と日々のすきま】

水の色が変わっているのがわかるでしょうか?
わらび自体も緑色が鮮やかになりました。

そして水洗いをして、さらに水にさらすこと数時間──
アクが抜けました!

柳川千秋・わらびのはなし【染織と日々のすきま】

シャキッと感と、ほのかな香りと苦味が、この時期ならではです。
わらび、みなさんはどのように食べますか?我が家では酢味噌和えやお浸しが定番ですが、そばの具や炒めものなどもいいですね。

ちなみに、わらびは染料にもなります。

柳川千秋・わらびのはなし【染織と日々のすきま】

これは以前染めた絹糸です。大きくなって葉が開いたわらびで染め、鉄媒染をしました。やや緑みをおびた、灰色のような茶色のような。雑木林の一部のような、とても好きな色に染まりました。

子供のころは、この時期になると近くの山や畑へ山菜採りに行っていました。今、なんとなくその時の、その場所の景色が思い浮かびます。

染も、食も、季節を感じられて、またこの季節を過ごせることを嬉しく思います。

では、また来年。

柳川千秋・わらびのはなし【染織と日々のすきま】
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この記事を書いた人

染織家

柳川 千秋 Yanagawa Chiaki

1988年神奈川県生まれ。元理学療法士。2016年より染織を学び始める。 糸を染め、機織りをして、着物や帯、小物などを制作している。

WEBサイト:https://yanagawa-chiaki.studio.site

instagram:@yanagawa_chiaki