暮らしのこと

20.12.26

考える時間

藤村 健一朗

藤村 健一朗

藤村健一朗・考える時間

今年も残り1週間を切りました。2020年を振り返ってみて、自分なりに考えてきたことをまとめてみることにしました。これから新しい年を迎える上で何らかの道標になればと願いつつ、今年最後の記事にしたいと思います。

今年を振り返る時、新型コロナウイルスがもたらした影響はやはり外すわけにはいきません。今も第3波真っ只中といえる状況で、専門家でさえもはっきりとこの先の未来を見通せていないように感じます。テレビやインターネットに溢れる情報を見れば見るほど不安に駆られてしまうのは、きっと私だけではないと思います。でも、少し冷静になって視点を変えて見てみると(今、この瞬間も医療現場などの最前線で、多くの方が必死に闘っていることもまた事実です。)この目にも見えない小さなウイルスによって、これまでスタンダードだと思われていた仕組みを一から考え直さなければいけなくなり、社会がこれまでとは少し違う方向へと導く推進力が生まれる、そんなきっかけにもなるのではないかと思いました。

少し話が大きくなってしまったので、視点を手元に戻してみます。

春先の緊急事態宣言の頃、時間の流れ方が、不謹慎かもしれませんが一昔前のお正月のようだと感じたことを思い出します。あらゆるもののスピードが上がっていく一方の時代に、一時的でもそれが止まったり緩んだりしたこと。それは明らかに私の心にある種の安堵感を与えましたし、物事をゆっくりと「考える時間」をもたらしました。考える内容は、コロナのことはもちろん、日々の暮らしのこと、仕事のこと、家族の将来のこと、写真への取り組み方、政治や環境問題まで、多岐にわたりました。さらに、妻と語り合う中でそれぞれを結ぶ接点を見つけたり、また新たな話題へと広がっていったこともあります。

ドラマの展開、アナウンサーの話すテンポ、新商品のサイクル、動画の再生回数…膨大な量の情報やイメージが、ますますスピードを上げて流れていくのですから、そこに合流するために自分自身のスピードも上げていく必要があります。でも、そのスピードに慣れてしまうことで、失ってしまうかもしれないものも確かにあるということです。ときどきその流れから距離をとって一呼吸置いてみる。そして遠回りかもしれないと思いながらも、いろいろな角度から一つの物事に対してじっくりと考えてみる。そういうプロセスを経て掴んだモノというのは、しっかりと自分の中に根を張る強さを持ちながら、いつか経験のないモノに出会った時には、そこから新たな価値観を見出せるだけの柔軟性も併せ持っていると感じます。

知らず知らずのうちに私たちから失われてしまうかもしれない「考える時間」
その大切さにあらためて気づかされた2020年。そして、まもなく迎える新しい年、それぞれがニューノーマルな日常を模索していく中で、従来通りのスピードと効率をひたすら追い求めるだけではない新たな潮流が生まれてくること、そして何より1日でも早くこの状況が改善して、こうして考えたことを物理的な距離を察ることなく存分に語り合える日が訪れることを心から願っています。

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この記事を書いた人

ウクレグラファー / Ukule-grapher 

藤村 健一朗 Kenichiro FUJIMURA

茨城県つくば市在住。 2012年〜2019年までオープンハウススタイルのギャラリーCOLBを運営。 建築に興味を持ったことがきっかけで写真を撮り始める。
 現在は4×5カメラで撮るポートレートをライフワークにしている。 趣味はウクレレの弾き語り。

WEBサイト:https://www.k-fujimura.net

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