被写体への想い
笑っている人を見ると、なんだかこちらも笑顔になりますよね。相手を笑顔にしているのか、自分が笑顔にされているのか、どちらかと言うことではなくて、お互いなのです。お互いが、お互いの鏡なのです。
昔、知り合いのカメラマンさんが話してくれたことがあります。スタジオで人を撮るとき、やはり最初はお互い探り合いな感じなんだそうです。でも、撮影が進むにつれ、お互いが乗ってくる。大げさに言うと、お互い自分を見せ合う。そうすると、ある時バーンと大きな音がする感じで、お互いがひとつになるような、突き抜ける瞬間があるのだと。
それがあるから人を撮るのは、やめられないのだそうです。また、有名な話だと思いますが、人を撮るカメラマンだけでなく、花や物を撮るカメラマンも、撮影するときには、話しかけながら撮影する方もいらっしゃいます。結局、被写体への想いが大切なのでしょう。
風を感じる
私は被写体と自分のまわりにあるものは、風なのだと思います。漂ってあると言う感じではなく、必ずどこかからどこかへ吹いていると。追い風なのか向かい風なのか、強いのか弱いのか、風を感じる力とそれに乗る力や、やり過ごす忍耐を常に備えていたいものです。相手は今どんな気持ちでいるのか、それに対して自分はどう思っているのか、それによって風が変わってきます。それは確実に写真に現れてきます。
自分の鏡
人を撮る場合、長く関わり撮影する人もいれば、撮影現場での短い時間で撮影する人もいます。どちらの場合も大切な事は、時間の長さではなく被写体と向き合う姿勢、相手との関係性です。人はどんな時も自分ひとりでは、成り立たない。自分が心を開いた分だけ、相手も心を開く。ファインダーを覗くときは、相手を尊敬しつつ真剣勝負で挑む。そして感謝する。そうすることで、きっと自分の鏡は磨かれて輝くのです。