写真のこと

20.08.14

モノとしての写真

藤村 健一朗

藤村 健一朗

藤村健一朗・モノとしての写真

スマートフォンの登場

スティーブ・ジョブスが、初めて iPhone を発表したのが2007年のこと。
それから10数年を経て、今や最も身近なカメラとなったスマートフォン(以下スマホ)で、世界中の人々がこの瞬間もどこかで写真を撮っています。フィルムカメラの時代から比べると、人々が撮る写真の枚数は比較にならない程多くなりました。私がスマホにしたのはほんの1年前のこと、あまりに多機能で便利であることにずっと抵抗があったからです。ガラケーで必要十分と思っていた私でさえ、今では躊躇なくスマホで写真を撮るようになりました。

ところで、皆さんは撮った写真をその後どうしていますか?
今のスマホの液晶画面は、とても明るくて写真もくっきりと映えて見えます。次々にスワイプしながら選んで家族や友人に送ったり、コメントをつけて SNS に投稿したり、フォルダごとに整理する人もいれば、数が多すぎて撮ったまま手つかずにしているという人も多いのではないでしょうか。
実は、この先に写真ならではの楽しみがあると、私は思っています。

藤村健一朗・モノとしての写真

写真の再発見

写真は、撮るのはとても簡単でシャッターを押せばいい。スマホであれば画面をタッチするだけで目の前の光景を残すことができますから、日々の出来事を捉えた写真は増えていくばかり…そこで、ふと思い立った時にそれまで撮った写真を、あらためて1枚1枚見返してみることにします。

ある休日の朝、目覚めたとき寝室に差し込んだ柔らかな光、ビールを手にゆったりと過ごした昼食のひととき、夕方海岸沿いを散歩したときの潮の香り…おぼろげだった記憶の断片がすっと鮮やかに蘇ってきます。

つながりはじめた記憶を辿りながら、印象に残った写真を選んでいきます。そうやって写真を選んだらプリントして冷蔵庫に貼ったり、写真に合うフレームを探して部屋に飾ってみる。旅の写真やお子さんの成長の記録であればアルバムにまとめたり、ネットサービスを利用して1冊の本にしてもいいと思います。

そして、出来上がったアルバムや本を手にとってページをめくったり、フレームを飾った部屋に身を置いてもう一度眺めてみる…次々に画面をスワイプして見ていたときとは、きっと少し違うなと感じるはずです。時間をかけて選び、モノになった写真に触れることは、自分自身が撮った写真を再発見するという新たな体験なのだと思います。(つづく)

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この記事を書いた人

ウクレグラファー / Ukule-grapher 

藤村 健一朗 Kenichiro FUJIMURA

茨城県つくば市在住。 2012年〜2019年までオープンハウススタイルのギャラリーCOLBを運営。 建築に興味を持ったことがきっかけで写真を撮り始める。
 現在は4×5カメラで撮るポートレートをライフワークにしている。 趣味はウクレレの弾き語り。

WEBサイト:https://www.k-fujimura.net

FaceBook:藤村 健一朗

instagram:@ken.fujimura