旅のこと

23.11.02

心に残る宿#1【旅カメラ旅ごはん】

小野﨑 由美子

小野﨑 由美子

城に泊る①

旅と言えば食。ですが、寝る場所も大変重要です。
日中は出歩くのだから、宿には寝に帰るだけ という考え方もありますが、ワタクシは宿も重要視したいタイプの旅人です。

まずは立地。一にも二にも立地。時間の限られる社畜の旅において、宿の立地は最重要課題です。

部屋の条件としては、
①鍵が閉まる
②古くてもいいけど清潔
③一日のお腹の健康のため、個室は専用
という条件は譲れません。軟弱なのです。

更にワガママを言えるのであれば、
④バスタブはなくてもいいけど、シャワーは専用だと嬉しい
⑤(日本の場合)チェックアウトが遅い方がいい
⑥(日本の場合)温泉!

限られた予算の中で、できるだけ満足度の高いお宿を探したい。その思いで夜な夜な執拗に検索するわけです。

さて、このシリーズでは、これまでの旅で印象に残った宿を国内外問わず、ひとつずつご紹介したいと思います。

第一弾は、Parador de Hondarribia

スペイン北東部、フランスとの国境の町、オンダリビアにあるパラドールをご紹介しましょう。パラドールとは、歴史的建造物を活用したスペインの国営ホテルです。

https://paradores.es/en/parador-de-hondarribia

いきなりお宿3か条に反するのですが、このお宿のあるオンダリビアの町は、交通至便ではありません。

タパスやフィルムフェスティバルで有名なサン・セバスチャンから車で1時間弱。路線バスもありますが、バス乗り場が不便なところにあるので、大荷物での移動には不向きです。ここはタクシーで向かいましょう。

華やかなサンセバを出て、しばらくは県道のような道を飛ばしていきます。しばらくして前方におもちゃみたいな可愛らしい町が現れたかと思うと、車は狭い城門を潜り抜けます。最後に、カテドラル脇の急坂をぐぐーっと登り切ったところがArma広場です。

小野﨑由美子・心に残る宿#1【旅カメラ旅ごはん】

目的のパラドールは、町の中心であるArma広場に面しています。

この建物はかつてお城でした。それも、宮殿ではなく城塞だったのです。あちこちに穿たれた穴は戦いの痕跡、本物の砲弾の痕です。パラドールの部屋の壁も城塞をそのまま利用しているので、なんと280センチもの厚みがあるのだそうです!

ナバラ王がこの城を建築したのは980年。国境を守る数々の争いの後、城塞はやがて存在価値を失い、打ち捨てられて崩壊寸前になっていたそうです。心ある人々が保存に尽力し、城塞の一部をパラドールとして再生して開業、今に至るのです。

さあ、お城に入ってみましょう。

小野﨑由美子・心に残る宿#1【旅カメラ旅ごはん】

さすがに城塞らしく、石壁にぽっかりと空いたエントランスは小さめ。かつては左右に兵士が立っていたのでしょうか。

小野﨑由美子・心に残る宿#1【旅カメラ旅ごはん】

パラドールのレセプションは、町のインフォメーションも兼ねているので忙しく、地図をもらいに来る人やパラドールの見学者でごった返していました。

なんとかレセプショニストをつかまえてチェックインし、宿泊客しか通れないガラスドアを押して中に入ります。

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こちらが中庭。スペインと言えば中庭(パティオ)ですよね。朽ちかけた石壁は昔のまま。城塞として使われていた頃の保存部分です。

私達が奮発して泊ったのは、広いスイートルームでした。今のウェブサイトを見ると、ジュニアスイートだと思います。

中世アンティークの家具が配され、キングサイズのベッドの前には一人掛けのソファがゆったりと置かれています。書き物机(デスクとは言いたくない)、長椅子もあって、長く逗留して小説にでも取り組みたい感じです。部屋のコーナーにはソファや深い色のチェスト。沢山の家具があるのに、それでもまだまだ広い。

あまりいい写真がなくて残念なのですが、ウェブサイトの通りですので是非見てみてください。

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ベッドルームの先には、カーテンで仕切れるようになっている小部屋がありました。まるで往年のイタリア女優が腰かけていそうな小部屋。

海に向かって開かれた窓からは、青インクみたいな海が見えます。対岸はもうフランスのエンダイヤ(フランス語でアンダーユ)。

小野﨑由美子・心に残る宿#1【旅カメラ旅ごはん】

この眺め。
これを見るために、オンダリビアまでやって来たのです。

お部屋の設備としては所謂ヨーロッパ基準で普通です。洗面台がダブルボウルであったり、クローゼットが二人分あったりするのはさすがデラックスルームですが、バスルームやアメニティ、冷蔵庫やミニバーは他のパラドールと同じだと思います。

デラックスとはいえ、華美ではなく、どこか田舎風でほっとする雰囲気です。アンティークに囲まれていると重々しくなりそうですが、可愛らしい赤のカーテンを使うなど、ファブリックでバランスをとっているようです。(今は少し変わっているようです)

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このパラドールには、レストランがありません。軽く飲んだり、コーヒーにブリオッシュぐらいの軽食をとれるカフェはありますが、夕食を取れるようなレストランがないのです。

何故なら、この町があるのはスペインとフランスにまたがるバスク地方。オンダリビアという呼び方もバスク語で、スペイン語ではフエンテラビアと言うそうです。バスクと言えば美食です。オンダリビアには、三ツ星レストランのシェフが食べに来るというレストランがいくつもあります。

観光局も兼ねるパラドールとしては、どうぞ我が町自慢のレストランで地元グルメを楽しんでくださいというわけです。レセプションに尋ねればお勧めのお店を教えてくれますし、予約もしてくれます。

私たちが訪れた時は第一候補だったレストランの予約が取れず、第二候補で電話をかけてくれたお店が「バスクの魚のスープ」でご紹介した LA HERMANDED DE PESCADRES だったのです。

夕食の提供はありませんが、朝食は他のパラドールと同様にビュッフェスタイルで用意されています。

翌日の朝食には、少しきちんとして行きました。建物内のインテリアと、館内で見かける宿泊客の雰囲気から、そうした方がいいかなと思ったのです。

いつもは閉まっているガラスの扉の向こうに入ると、やはりでした。

小野﨑由美子・心に残る宿#1【旅カメラ旅ごはん】

パリッとしたクロスのかかったテーブルで、皆さん楽しそうにお食事されていました。小奇麗なシャツやワンピース姿の人ばかり。小さなお子様もお行儀よく食卓を囲んでいました。

パシャパシャ写真を撮る雰囲気ではなかったので控えましたが、お食事もお店のインテリアも本当に素敵な場所でした。

このパラドールに泊まったのはもう16年も前の事です。思い出は美しくなりがちですし、ホテルだって変わっていくものです。ですが、ウェブサイトを見る限り、このパラドールは変わらずあの姿のまま、素敵なままでいてくれているようです。

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どうでしょう。
国境のお城ホテルに泊まってみたくなりましたか?

スペインのパラドールはその建物の歴史や地域の特性を活かして運営されていて、どこもとても魅力的です。

次はどんなお宿をご紹介しましょうか。

5+

この記事を書いた人

兼業旅人/猫愛好家/社畜

小野﨑 由美子 Yumiko Onozaki

旅と食と猫を愛するバブル入社の社畜。都内在住。 渡航歴は80回以上、訪れた国は30か国。香港への渡航は20回を超える。 以前はキレイな海や美味しいローカル飯が旅の主目的だったが、最近はグレートネイチャーな旅も。 愛猫しじみは元捨て猫(♂)。夫婦で絶賛溺愛中。 NADAR「女性による女性のための写真教室」で本格的に写真に取り組み始める。 愛猫はもちろん、旅の景色と食べ物、日々の東京を撮っている。

WEBサイト:Blog「次、どこ行く?」

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