Englishman in New Yorkは、1987年にリリースされたスティングのアルバムNothing Like The Sunの一曲で、1988年にシングルカットされている。
計算してみて驚いた。もう35年も前の曲である。
曲名は知らなくても、特徴的なイントロを聞いたことがある人も多いと思う。少し掠れたようなスティングの声が心に響き、ブランフォード・マルサリスのサックスが耳に沁みる。楽曲の良さと歌詞の良さが相まって、サビを一度聞くと、永遠に頭の中で回り続けてしまう。
MVもえらくカッコよかった。金髪サラサラのスティング(若い!)が黒いコートに身を包み、冬のニューヨークを歩く。その姿を全編モノクロで捉えている。デビット・フィンチャーが監督をつとめていたそうで、そりゃカッコいいはずだ。
この曲は、旅をしていると思い出すことが多い。
知り合いのいない大きな町、荒涼とした景色、言葉の通じない場所。何でもない瞬間に、ここでは自分はよそ者なのだと気づいてしまった時。
自分が伝えたいことが伝わらなかったり、相手が伝えようとする言葉が全く分からなかったり、その場に相応しい振る舞いができなかったり。そんなことは、旅先ではよくあることだ。凹むこともあるけれど、気に病むほどではない。
だが、知らない町で生活することを余儀なくされているとしたら。
私はニューヨークに行ったことはないし、海外生活をしたこともない。だから、この曲が本当に伝えたいことを感じることはできないのかもしれない。
けれど、この曲が持つ何かにとても惹きつけられる。静かな曲の中に潜む皮肉屋な存在が、そっと背に手を置いてくれるような気がするのだ
実は、Englishman in New Yorkはそれほどヒットしていない。スティングにはポリス時代を通じて世界的なヒット曲が沢山あって、どれもいいと思うし、好きな曲も多いのだが、この曲だけは私の中でアタマ一つ抜けている。
Be yourself no matter what they say
「誰に何と言われても自分らしくいる」
最後に何度もリフレインするこの歌詞が聴きたくて、何度も何度も聴き返してしまう。
そんなに強くはなれないと思いつつ、そうありたいと強く願いつつ。