旅のこと

21.02.13

恋するイブクロ【旅カメラ旅ごはん】

小野﨑 由美子

小野﨑 由美子

世界は再び閉塞感に覆われた。体は居住地に縛られ、ココロは自由なはずだが、やはりその事から離れられない。

とは言え、イブクロは気ままである。
何があろうとお腹は空く。どこに縛り付けられていようと、どこを旅していようと、お構いなしである。腹がへるものはへるのである。

そんな私のイブクロが今一番焦がれているのは、あの小さくてうるさくてパワフルでノスタルジックで美味しい街、香港である。
100万ドルの夜景きらめくレストランから、カレーの香り漂う謎のスナックを売るスタンドまで、あらゆるレベル感の食がひしめき合う食のワンダーランド。

そして、殊のほか恋しいのが、100万ドルではなく謎スタンドに近い方の、その場所にしかない食べ物屋さん達である。

小野﨑由美子・恋するイブクロ【旅カメラ旅ごはん】
茶餐廳はファミレスと訳されることが多いが、昭和の喫茶店にも似ていると思う。

いつでも行けると思っていたら、なかなか行けなくなってしまったので、せめて妄想してみる。

怒号かと思うほどのボリュームで広東語が飛び交う下町の飲茶専門店。ほっかほかの蒸籠は早いもの勝ちだ。
どこまでが道路でどこまでが店なのか判然としない麺屋。焼売か!というサイズのワンタンに、輪ゴムのような食感の麺(誉めている)は、オーダーすると秒で出てくる。
早朝から深夜までおっちゃんが大釜でかき混ぜているお粥は、ふわトロクリーミー。
ふるふるのコクうま牛乳プリンやチープなマンゴプリン。茶餐廳で出てくる野菜ほぼゼロの豚バーガーに出前一丁の怪しい麺料理。働く市場人を支える激甘高カロリーフレンチトースト、名前だけを聞くとゲッと思ってしまうパンストミルクティー。

妄想は止まらない。
この調子で書いていくと原稿が何ページにもなってしまう。
何しろ、魂の旅友と20回も積み重ねた香港への旅である。故郷でもないのに毎年1回、時に2回は行き、私にとっては渋谷などより自信をもって歩ける街となった。

小野﨑由美子・恋するイブクロ【旅カメラ旅ごはん】
このタイルの色、丸椅子、小心地滑の看板。香港迷にはたまらない組み合わせ。

恋しい。
ああ、恋しい。

100万ドルの夜景を従え、小さな体で波を越えていくスターフェリーに乗って、大人げなくパンパンにしてしまったイブクロをさすりながら、「明日は何食べようか」なんて言いたい。

あの元気でがさつで、優しい香港であるうちに、早く会いに行きたい。

小野﨑由美子・恋するイブクロ【旅カメラ旅ごはん】
7+

この記事を書いた人

兼業旅人/猫愛好家/社畜

小野﨑 由美子 Yumiko Onozaki

旅と食と猫を愛するバブル入社の社畜。都内在住。 渡航歴は80回以上、訪れた国は30か国。香港への渡航は20回を超える。 以前はキレイな海や美味しいローカル飯が旅の主目的だったが、最近はグレートネイチャーな旅も。 愛猫しじみは元捨て猫(♂)。夫婦で絶賛溺愛中。 NADAR「女性による女性のための写真教室」で本格的に写真に取り組み始める。 愛猫はもちろん、旅の景色と食べ物、日々の東京を撮っている。

WEBサイト:Blog「次、どこ行く?」

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