暮らしと写真の提案マガジン
写真のこと
20.12.18
川野 恭子
今日は少し山にまつわる話を。このコラムをご覧頂いている方はご存知かと思いますが、私は山に登ることが大好きで、隙あらば山に登っています。中高ともに文化部で、学校のマラソン大会が大嫌いだった私。そんな私が山に興味を持ち始めたのは40歳を超えてから。それまでは登ることはもちろん、山の景色にもまったく興味がなかったのですが、四年前に十勝岳を訪れてからはすっかり山に魅了され、狂ったように山に登る日々が続いています。
山に魅了されたのはもちろん写真ありきなのですが、絶景はそれほど興味がなくて、どちらかというと山に登る過程での心の動きを残すことが多いです。光がきれいとか、色がきれいとか、倒木から生まれた新たな命とか、そうしたものに心が動いたりします。だけど、それら表面的な事象だけではなく、その事象の先に私が求めている世界が見えたときこそが本当に心動かされる瞬間。私が求めている世界とは、山に対する私の思いでもあり、山に登る動機でもあります。
「なぜ、山に登るのか?そこに山があるからだ。」これは、イギリスの登山家ジョージ・マロリーの有名な言葉ですが、山に登る人の誰もが一度は考えたことのある問いではないでしょうか?私も、下山後に立ち寄った温泉に浸かりながら、生まれたままの姿で真剣にその問いに向き合ったのを覚えています。そこで私が得た解、というか仮定は「山上他界」でした。人が死んだとき、その魂は「山」に行くという日本古来の信仰のひとつです。人生80年時代と言われる今、その折り返し地点を過ぎて突如襲われた山への衝動。その衝動の源は、山へ還りたいという魂の叫び、もしくは、遺伝子レベルで組み込まれたものとしか説明がつかない気がしたのです。なので、その仮定を証明する事象を見つけたとき心が動くし、もしそれが「絶景」のなかにあればシャッターを切る、ということになります。とはいえ、やはり絶景よりも何気ない光景に目を向けてしまいがちですが。
写真家
京都造形芸術大学通信教育部美術科写真コース卒業。日々と写真 主宰。 「日々が写真を紡ぎ、写真が日々を紡ぐ」をテーマに写真の楽しみかたを提案。並行して、山を媒体に自らの内面と向き合う作品を撮り続けている。写真講師、雑誌や書籍での撮影・執筆、トークイベント、テレビ出演など、多岐に渡り活動。 近著に、写真集『山を探す』(リブロアルテ)、写真集『When an apple fell, the god died』(私家版)、『はじめてのデジタル一眼撮り方超入門』(成美堂出版)他多数。
WEBサイト:http://kyokokawano.com/
FaceBook:@Kyoko.Kawano.K
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プロフィール詳細 >
飯山折々/初夏・小満の頃
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