長野県飯山市。長野県の北端にあり、唱歌「ふるさと」「朧月夜」に歌い継がれる光景の広がるこの土地に、縁あって撮影に通っている。飯山で撮影した様々な光景をお届けする連載「飯山折々」、今回は6月下旬の光景をご紹介したい。
6月下旬、仲夏・夏至の頃
1年の折り返しの月を迎え、早くも暑さが本格的になってきた6月下旬。
畑では作付けが進められ、5月に植えられた田んぼの稲は、すくすくとその背を伸ばしていた。
田畑のそば、民家の脇、街道沿いなど、至る所でタチアオイがまっすぐに背を伸ばし花を咲かせている。梅雨の深まりと共に開花が進むタチアオイ。一番上まで花が咲くと梅雨明けと言われているが、今年は花の進みを待たずに早くも梅雨が明けてしまった。あまりにも早く梅雨が明けてしまい、さすがに花も間に合わなかった様子。
根曲竹とイチゴ
この土地の方々が毎年楽しみにしている山菜が、根曲竹(ねまがりたけ)だ。この地域で「たけのこ」と言うとこの根曲竹のことを指す。5月〜6月がシーズンで、6月末だったこの時はシーズン最終盤。お世話になっている古民家でいただいたのが、根曲竹がたっぷり入った特製朝カレー。これがまた格別の美味しさ。毎年楽しみにしてしまう気持ちがわかる。
朝カレーをいただいている間に農家さんがお裾分けで持ってきてくれたのが、箱いっぱいの真っ赤なイチゴ。これを見て、イチゴの旬が本来は春から初夏にかけてだったことを思い出した。そう、畑のイチゴは初夏に実ることを、私は忘れていた。
街でイチゴ(ハウス栽培の)が出回るのは冬なので、いつの間にかイチゴ=冬という気になってしまっていたのだ。きっと、こうやって人は自然と共にある暮らしの感覚を手放していってしまうのだろう。
夏越の祓
1年の半分にあたる6月30日に、茅の輪をくぐって半年分の穢れを落とし、残り半年の無病息災を祈願する行事「夏越の祓」まであと2日だったこの日、小菅神社では茅の輪作りが行われた。
地域の皆さんの手で立派な茅の輪が仕立てられていく。自然と人の営みと信仰が、今も当たり前に結びついていている地域社会。この茅の輪作りの様子を間近に見て撮影させていただいたことで、私が探しているもの、自分でもまだはっきりとはわかっていない“何か”、そのカケラを見つけたような気がした。