世間では些細なことと捉えられていても、自分にとっては大切なこと。会話の流れで「ちょっとくらいなら」と口にすると「なんだそれ」と笑われることもあるし、「もっと聞かせて」と言われることもあります。私にはそんなことが他の人よりも沢山ある…ような気がしています。
漠然とやりきれなさを感じたり「私って…?」と自身に疑問を感じると、「読もう」と手に取る本が幾つかあります。今回はそのうちの二冊を紹介します。「ちいさなかみさま」と「The Day-to-Day Life of Albert Hastings」です。
石井光太『ちいさなかみさま』
「ちいさなかみさま」は、ノンフィクションライターである石井光太さんが取材されるなかで出合った奇跡の実話を集めたもの。
絶望の淵に沈む人が救いを求めるとき、その人の心の支えになるものを石井さんは「ちいさなかみさま」と呼びます。別れや死、自分の力だけではどうにもならない出来事に直面し、厳しい環境のなか生きる人たちの心の支えになるものは千差万別。それこそ「ちっぽけな」と言われそうな思考や対象も、苦境に立つ人の心を救う存在になり得ることを教えてくれる一冊です。
KayLynn Deveney 『The Day-to-Day Life of Albert Hastings』
「The Day-to-Day Life of Albert Hastings」は写真集です。写真を学ぶためにイギリス・ウェールズへ渡った写真家ケイ・リン・デヴェニーさんが、滞在先で一人の老紳士アルバート・ヘイスティングさんと出逢ったことがきっかけで生まれた作品です。
作家が撮影したアルバートさんの写真には、アルバートさん本人による手書きのキャプションが添えられています。記される内容は特別なことではありませんが、その一つ一つが凡庸であるが故に、それらを観るこちら側が自身の日常と重ね合わせることも容易にできてしまいます。この小さな共鳴を繰り返すことは自らの日常を顧みる行為に似ていて、この作品を観たあとは必ずと言って良いほど自分の生活を成す身近な場面を撮りたくなります。慈しみを抱きながら。
KayLynn Deveney “The Day-to-Day Life of Albert Hastings”
自分の価値観を他人のそれに合わせる必要は無いけれど、「気にしないように」と努めていても「もしかしたら、わたし、変かも?」と疑問を持ちはじめた途端、心の隅に不安の端っこが見え隠れすることあります。そんなときに本を手に取り、ページをめくり、あれこれ考え、振りかえり、いつもの生活へ戻ります。ちょっと変わった本の読み方、私はこれが好きなんです。
秋の夜長のおこもりに、この二冊もぜひ。