オープンハウスギャラリー
昨年以降、家で過ごす時間は以前よりずっと増えているのではないでしょうか?そうであればたとえ住み慣れた家であっても、できるだけ居心地良くいい時間を過ごしたいものです。実は2012年から一昨年までの7年半、夫婦で暮らしているマンションの2部屋を時おりオープンハウスギャラリーとして解放していました。そのギャラリー体験から、家という空間とそこに住まう人との関係性について私たちなりに感じたことを、実際に行ったイベントや企画展示を幾つか振り返りながら2回に分けてお話してみようと思います。
キーワードは「シェア」
そもそもこんなちょっと変わったギャラリーをやってみようと思い立ったきっかけは、2011年の夏、まだまだ東日本大震災と原発事故の傷跡深く多くの人の心も沈みがちだった頃に、近所のバッグ屋さんが始めたお話会に参加するようになったことでした。毎回身近なテーマについて、参加者がそれぞれの体験や感じたことを気軽に語らうその集まりは、千葉からつくばへと越してきて日も浅くほとんどつながりがなかった私たち夫婦にとって、今に至るまでのつくば暮らしの土台となる人たちと出会えた貴重な機会となりました。
そのお話会で知り合った人たちとの交流が深まっていくうちに、私たちも人同士のつながりを生むそういう場を持てないかと考えるようになりました。もともと私は建築や空間への興味が強く、美術館やギャラリーあるいはカフェなども、まずその建物や佇まいに惹かれて訪れることがほとんどでしたので、自宅の空間をシェアして他の人にも体感してもらうことが、何よりコミュニケーションのきっかけになるのではないかと考えて、オープンハウススタイルのギャラリーという形になりました。そして、この「シェア=共有すること」は、ギャラリーオープン後に企画した展示やイベントにおいてもコンセプトの柱となるものでした。
一夜限りの写真展
特に記憶に残っている企画の一つが、シェアバー「一夜限りの写真展」です。これは、参加者が何か一品を持ち寄るポットラックパーティ形式の写真展で、そのタイトル通り展示するのはこの日一夜限りです。それぞれが持参したお気に入りの写真を思い思いの場所に飾って、その1枚にまつわるエピソードを語ってもらいながら、持ち寄った料理も一緒に味わうという試みでした。
一期一会の参加者同士が、空間と食事そして写真の記憶をひととき共有してみるという体験は、五感でコミュニケーションをとれるからでしょうか、初対面であってもスムーズに相手とのつながりを引き寄せられる感覚がありました。会場がこじんまりとしたこのような居住空間であることもまた、お互いの距離を縮める上で役立っていたように思います。
今の状況では、狭い空間で飲食を伴うこのようなイベントの開催はなかなか難しいところがありますが、またいつかトライしてみたい企画です。
次回、オープンハウスギャラリーでの実際の展示をさらにもういくつかご紹介してみようと思います。